◆ビジネススクール(高度職業人養成プログラム)

 

松尾和弥「組織ディスアイデンティフィケーションが個人のプロフェッショナル意識を促進する可能性:自治体職員を対象とした実証研究」 

[要旨]
 個人にとって「組織と個人の関係」は「自分は何者か」という自己定義を形成する重要な要素である。組織と個人の関係の中で個人が自己をどのように定義しているかを取り扱う理論的枠組みとして「組織アイデンティフィケーション/組織ディスアイデンティフィケーション」がある。このうち組織ディスアイデンティフィケーションについて、先行研究では離職や反抗行動などマイナスの結果要因ばかりが注目を集め、プラスの結果要因はほとんど探索されてこなかった。 
しかし、複雑性・多様性を増す今日の社会情勢下では一定程度の組織ディスアイデンティフィケーションは組織にとっても個人にとっても不可避であり、学術的にも実務的にもそのプラスの側面を見出す必要性が高まっている。 そこで、本研究では理論研究、定性調査及び定量調査を通じて、組織ディスアイデンティフィケーションのプラスの結果要因を明らかにし、学術・実務の両面での貢献を図っていく。 
本研究では組織ディスアイデンティフィケーションの持つ「個人化」という側面とその根底にある自己高揚欲求に着目し、組織ディスアイデンティフィケーションが個人のプロフェッショナル意識を促進する可能性と、そうした個人の態度・行動が今日の組織のニーズと合致している可能性を見出した。その上で、東海地方のある地方自治体 を対象に定性・定量調査を実施し、組織ディスアイデンティフィケーションが直接的または交互作用効果を通じて個人のプロフェッショナル意識を有意に促進していることを明らかにした。  本研究の理論的含意は、プラスの側面を含む組織ディスアイデンティフィケーションの結果要因の幅広さを明らかにした点と、「個人が組織の何にディスアイデンティファイしているか」という変数が結果要因の先行変数になる可能性を示唆した点である。 
実務的含意としては、実在の組織において組織ディスアイデンティフィケーションが不可避となっている状況を明らかにした点、組織ディスアイデンティフィケーションを活用するという選択肢の存在を明らかにした点及び組織ディスアイデンティフィケーションを受け入れ活用することが組織にとって最も合理的な選択であることを明らかにした点が挙げられる。