◆ビジネススクール(高度職業人養成プログラム)

 

澁谷知範「研究開発組織の社会ネットワーク分析 ―研究プロジェクトの業績向上を図る組織マネジメント―」

 

[要旨]

 近年、情報通信技術等の急速な発達により、時間や空間の制約を超えた組織活動が可能になってきた。また、競争環境の変化が極めて速くなってきており、戦略的な意思決定と実施のスピードが重要になっている。このような経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応するために、企業の組織形態に関しては、従来の比較的安定した環境下で効率性を発揮する階層型組織よりも、一層フレキシブルに自律的な結び付きを行うネットワーク型組織に注目が集まっている。

 本課題研究では、階層型を基本としながらもネットワーク型の要素を取り入れている企業の研究開発部門を事例に、研究開発グループ間でどのような連携ネットワークが構築されているか、またプロジェクトマネジャーはどのようなプロジェクト経験を蓄積しているか、更にこれらと研究プロジェクトの業績とはどのような関係になっているかについて実証的な分析と考察を試みた。

 研究開発グループ間の社会ネットワーク分析を通じて、当部門においては、技術領域別に輪切りにした縦の連携と、プロジェクト成果物の特性に応じた横の連携を促進させるマトリクス組織を構築し、かつプロジェクト期間やリソースに応じて柔軟かつ機動的な体制構築が可能なネットワーク型の要素を採り入れることが有効であると示唆された。

 また、研究プロジェクトと開発プロジェクトの相互作用の重要性を指摘したうえで、プロジェクトマネジャー個人は研究プロジェクトと開発プロジェクトの両方を担当させることが望ましく、かつ研究プロジェクト比率をある程度高めることが研究プロジェクトの高業績化には望ましいことを明らかにした。